accarezzevole




―――――俺は時々、こいつが砂糖で出来てんじゃねぇか、と思う。


しっとりと上気した肌も、かすかに開いた唇から零れる吐息も、目尻に滲んだ涙でさえも、こいつの何もかもが甘くてしょうがない。

とてもとても甘くて その甘さに どこまでも溺れてしまいそうだ





「あー腹減ったー。やいやい、食うモン持って来いってんでぃ」
白々と夜が明ける。どんなに閉め切っても多少は出来てしまう障子の隙間から、朝の陽射しが細く入り込んできていた。
目を覚ましたどろろが、甘さの余韻など欠片もない声で俺の背中を小突く。
「随分と偉そうな態度じゃねぇか、おい」
小突く…というか、ベシベシと遠慮なく叩かれて思わず言うと、じとりと睨まれた。肩どころか顎まですっぽりと布団にくるまったまま上目遣いで睨まれても、正直可愛いとしか思えないのだが、それを口にしたら今度は叩くどころか蹴り出されそうなので、その台詞はさすがに心の中に仕舞い込んでおく。
「そりゃ俺だって動けンなら自分で取って来るけどよ? どっかの誰かさんのせいで、体が痛くって堪んねぇんだよなァ。特に、腰とか腰とか腰とか」
不機嫌そうに言われてみれば、思い当たる節はそれこそ嫌って程あるわけで。
「……何か、コレが食いてぇとかあるか?」
言葉に詰まった俺は、暫く間を空けてから気まずげに目を逸らしつつ訊いた。


急に下手になった俺の態度に満足したのか、ウムウムとこれまた偉そうにふんぞり返ると(勿論布団の中で)、今度は腕を組んだまま俯いた。どうやら食べたい物を熟考し始めたらしい。忙しない奴だな……と思いつつも、真剣に悩む姿を微笑ましく見ていると、やがて

「んー…っと、だな。あ、甘ぇモン食いてぇ!」

パァッと花が開いたような笑顔で言った。
「朝っぱらから甘ぇモンかよ?」
「うっせぇなー疲れたときは甘ぇのが一番なんだっての!」
「痛ッてぇ!」
今度は二の腕を叩かれた。よりによって生身の右腕を狙う辺り、わざととしか思えない。かなりの音がしたことからも察するに、これは多分くっきりと紅葉が浮かび上がっている。
ちっとは加減をしろと文句の一つも言いたくなるが、昨晩を思い返すと加減も限度も無かったのは正に己自身なので、あまりの説得力の無さに口を噤むしかなかった。
ヤレヤレと起き上がって着物を羽織ると、手早く身支度を整える。素泊まりの安宿なので、飯の類は外で調達するしかない。
どろろは甘いものが良いと言ったが、さて自分は何を食べようか…などと考えていたら、ふと気だるそうに布団に潜っているどろろに目が止まった。
「俺は、やめとくか」
不意に呟いた俺の声に、どろろは何だ? という風に首を傾げる。
「いや、俺は甘ぇのは遠慮しとこうと思ってよ」
何気に甘味が嫌いな方ではない俺のそんな言葉に、どろろは不思議そうな表情を浮かべた。
俺は身を屈めると、その顔に頬を寄せ

「ゆうべ、たっぷり味わったからな」

掠め取るように軽く唇を合わせた。


熟した林檎のように染まる顔をいつまでも眺めていたかったが、鼓膜の危険を感じ取って即座に部屋を退散する。間一髪、襖を後ろ手で閉めた途端に盛大な罵声が浴びせられた。
「こりゃ、相当美味いのを用意しねぇとな」
今頃しっかりヘソを曲げてるであろうお姫様のご機嫌を取る為に、俺は足早に宿を出た。





きっと 彼女より甘いものは 到底見つからないだろうけど





初めてのキリ番作品が、若干エロスって……!(白目)
いや、描いてて凄い楽しかったのは事実ですが。えぇ楽しかったですよ、そりゃもうvv
青空あいる様よりリクエスト『あ・まーい!的な百どろ』でございます。あ、甘いかなコレ;;
裏的でもOKとのお言葉に、ほんのりそんな雰囲気を出してみました。何ていうか……朝チュン?(爆)
色んな部分を深読みして下さい☆
タイトルは伊語で「そっと触れるような・愛おしむような」の意。実はもう少し直接的な意味もあったりなかったり(え)

しっかし気持ち悪い兄貴で本当スミマセン。頭のネジが緩みっ放しな兄貴ですが、やっとここまで漕ぎ付けたんだから無理もないかなー…なんて。肩の一つもポンと叩いてやりたい気持ちです(笑)


青空あいる様、700HIT申告有難うございました〜vv

も、萌えーーーーーーーーー!! 同時に燃えーーーーーーーーーー!


・・・と、まずは先に叫んでみる(迷惑)
本当に・・・素敵な小説ですっ!!本当にキリ踏んでてよかったです・・・っ!さすがは如月様です!
思い切って「あ・まーい!的な百どろ(裏的でもよくってよ?(笑))」を頼んでよかったぁ!
いきなりこんなリクをしちゃってまずかったかなー;;と思ったのですが、まさかこんなにもおいしい小説を頂くなんて…!
これぞまさしく結果オーライってやつですね!(なんか違う)
兄貴がどろろとしちゃったのが燃えた上、朝チュンっていうおいしすぎるシチュエーションに萌えました!
特にこれが!

『掠め取るように軽く唇を合わせた』

兄貴エローい!つーか腹黒ーっ!天然攻めだーっ!(言い放題ですv)
いいっスよ、こういうのを求めてたんですよ、俺は!!(力説)
また兄貴に限度や加減されなかったせいでぐったりなどろろを見てハァハァしてたり(*´Д`)
本当にありがとうです〜!!一生大切にします!つーか宝物です!!
またまた様子を伺ってこっそりとキリ番を踏みたいですvv(ヤメロ)

如月様、本当に素敵な小説をありがとうございましたーっ!